またもTPPネタ。

但し本丸の方はもう決着したと言えるので枝葉の話[1]

今回のTPPに纏わる報道を観ていて違和感を感じた一つに、消費者団体[2] が「食の安全が脅かされる」とTPP反対を表明していた点がある。

これの根拠として中国製冷凍餃子中毒事件を挙げているという幼児性。

相前後して発覚した日本国内の食品偽装問題、食品汚染事件をみて分かる通り「信用できる業者と信用できない業者がある」という事実。これを延長して「中国にも」「信用できる業者と信用できない業者がある」という考えてみれば当り前の中学生にも分かる話になる筈が、どういうわけだか国境の外の話になると「中国の食品(農産品を含む)は全て危ない」という飛躍した話になる。

社会主義の負の面として、真面目にいい仕事をしようがいい加減に仕事をしようが同じ労働に対しての対価は基本的に同じという側面から、なるべく楽をして(手を抜いて)仕事をする方が賢いというモラル低下が共産党支配になってから顕著になり今もその余波が残っているのは確かで、この意味で総体的に比べたら「いい加減、または不正な仕事をする人および企業」は日本より中国の方がパーセントにして今までのところ高いであろうという推定はたぶん間違っていない。

ただここで注意すべきは「パーセントとしては日本より低いかも知れないが真面目にいい仕事をする人および企業はゼロではない」という点と「今までのところ」という点である。

実際ここ数年をみていると中国産の製品(農産品を含む)のクオリティーは眼を見張るくらいに向上してきている。

これは何故かというと簡潔に言えば「それで金になる」と学習した中国人が増えてきているからである。

実に粗い大雑把な捉え方ではあるが、その国の国民性というか、その国の国民(民族?)の大きなレベルでの行動原理が何に支配されているかというのを端的に言い表すと、中国は「金治」の国だと言える側面があり・・・つまり「金(経済)によって治まっている国」なのではないか?というのが私の見立てである。

日本では「拝金主義」と言うと99%悪い意味にしか受け取られないだろうが、これを「金に応じてプロフェッショナルに徹しようとする主義(または態度)」だと捉え直すならば「応分の経済的利得が確保される限りに於いて応分の努力、責任を果たす」という自由主義経済圏に於いての経済人としての実に真っ当な感覚なだけであると分かる筈で、この意味に於いて中国人は「拝金主義」であると・・・つまり悪い意味も含むだろうが良い意味でも拝金主義・・・言えると私は考えている。

つまり、以前の社会主義時代の悪癖から抜け出せないで相変わらずいい加減な金儲けをする者もまだまだ沢山居るが、「いい仕事をすれば金になる」と分かった者がいい仕事をし出して、その数も増えてきているということである。

以上は状況等を客観的に観察した私の推測に元々は過ぎなかったのだが、これを中国の企業を相手に取引をしている会社に勤める友人[3] 、知人にぶつけたところ「大筋で間違っていない」という返事が返ってき、また「金になると判った途端に眼の色が変わる彼らの向上心も含む貪欲さには敬服するものがある」という意見も貰っている。

つまり私の言いたいのは、今までは確かにバカにされても仕方ない低レベルなことをやっていたのかも知れないが、いつまでもそのまま馬鹿にしている態度で正しいのか?ということである。

実際、この設問自体既に過去にものになっていると私は思っている。

つい4〜5年くらい前までは「日本の企業または個人が中国に進出してこの管理・監督下で操業していた会社は」という鍵括弧付きであったかも知れないが、今やそうではなくなってきている。

もう20年以上前の大学生の頃に読んだ大前研一氏の本に「我々はご飯をいただく時に "お百姓さんに感謝していただきなさい" と躾、教育をされて大きくなってきた。これが海外の農業従事者になった途端 "商社が買い付けてくる買い付け先" に過ぎないという態度は正しいと言えるのか? 安全で美味しい食品を我々に提供してくれているのなら海外のお百姓さんにも等しく感謝するのが当然なのではないか?」という意味合いの[4] 一節があったのを今でも憶えている。 この一文は、よく考えもせず(無根拠に)なんとなく「日本の農家は信用できる」と思っていた自分のその考えが「そうとは自覚無しに国粋主義的・民族差別的に発想していたこと」に気付かされ当時非常にカルチャー・ショックを受けた。

冒頭に引用した「食の安全が脅かされる」と表明していた消費者団体などは、またそれに喝采を送っている人達は、このこと・・・民族差別的、国粋主義的言辞であること・・・に気付いているのだろうか?

また真に「食の安全」と言うのなら、「安全基準、衛生基準が決められていく過程も含めて "見える化" し我々のチャックが充分機能するよう」に要望するのが筋で、TPP反対ではない筈。

念の為に付言しておくと、私はいわゆる媚中派ではない。上記の考察の通り「金にあまりにも敏過ぎる」ので個人的には好きにはなれない。

しかし、その金に敏過ぎるマイナス面だけを言い立ててプラス面を無視するのはフェアではないと思うのである。


----[ 脚注 ]---------------------------------------------------------------------------
  1. TPP是非論じゃないという意味で、この問題が重要じゃない枝葉末節の話という意味ではない
  2. の全てか幾つかだけかは知らない。そこまでちゃんと調べていない
  3. 月に何度も中国に出張している人。経営者も含む
  4. 一字一句正確な引用ではない

最終更新日:2012年4月20日