大飯三号・四号機にはベント機能自体がそもそも必要ない
7月 02
ロジカルシンキングのすすめ 原子力発電, 原発事故, 原発議論, 反原発 No Comments
中途半端な知識で知ったようなことを、それも東京新聞・中日新聞論説副主幹という立場の人がこういう公性の高い場所で書くのは如何なものか。
フィルター付きベントも防潮堤もないのに「事故を防止できる対策と対応は整っています」と大飯原発再稼動に踏み切る野田首相。 政治と官僚の迷走、ここに極まれり! | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32792
以下の動画を観れば分かる通りPWR型(加圧水型)である大飯三号・四号機にはベント機能自体がそもそも必要ないのですよ。
より詳細に言えば、燃料棒に使われているジルコニウム量が少ない、格納容器が五倍のサイズである事などから、ベントが必要になるような状態の発生閾値が高い。言い方を換えるならば、ベントが必要になるような状態にもしなった時はベントどうこう以前に他の部分がもっと深刻な状況になっているの。 この点が、ベントを適切な段階で実施しないとより悪化した事象が発生するBWR型(沸騰水型)とは大きく異なる。
また「防潮堤云々」も、今回の福島事故というよりは東日本大震災から得られた教訓は、いくら高い(または強固な)防波堤、防潮堤を作っていても、無限に高い防波堤・防潮堤は作れないので、その想定を超えた津波が押し寄せれば何の意味も無いので、ここに金を注ぎ込むのはあまり賢いやり方ではない。それよりも水が押し寄せても大丈夫な作りにしておいた方が良い(浸水する前提で気密性・耐圧性を上げておいた方が安全面、コストの両面で良い)ということなので、この観点での対策は少なくとも大飯三号・四号機には施されている(と同ビデオを観ればわかる)。防潮堤の高さが十分であるか否かの議論自体があまり賢い議論でないのである。
まぁ日本のマスコミでは寧ろ当然に近い(というのは情けないのだが)、「”原発際稼働は危険”という結論にしたい意図」が先にあって、これを結論付けるためによく調べもしないで記事を書いているのだろうけども。
2012年7月2日 09:34 追記:entry後、普段観ない朝のワイドショーを観てたら、大飯三号・四号機に「フォルター付きベント機能を付ける予定になっている」そうな。飲みかけたコーヒー吹いた! 先述の通りPWR型にはベント機能は実質的に意味がない。だから付けていないのだが、これをきちんと技術論理的に説明をすることよりも、意味の無いベント機能を付けて気分的に安心する大衆に迎合したことのようだ。アホか。 いや実際アホだ。 工業系学校で学んだ人は元よりちょっとした以上の工作をしたことのある人なら知っていることだが、一旦完成したものに後から手を加えて造作をすると必ず強度&整合性は低下する。それが精密な精度を要求されるものであればあるほど、この強度低下は結構デリケートな問題になる。こんなこと工学的常識。 雰囲気として(科学的根拠の無い)安心を得たい人々に迎合することを完成度の高い原子炉の強度を犠牲にして実現しようとする。これを愚行と呼ばずして何と呼ぶ!